住宅の照明計画で現場に行くと、スポットライトは当たり前のように下向きになっていることが多い。
けれど、吹き抜けの壁に取り付けるなら、デフォルトは上向きであってほしいと思う。
明るさは床面の照度だけで決まるものではない。
人が感じる明るさは「明るい面の量」、つまり視覚に入る明るさの面積で大きく変わる。吹き抜けの高い壁面をアッパーで照らせば、視覚面積が一気に広がり、実際の照度以上に明るく感じられる。光が上へ伸びることで、空間のダイナミズムも強調される。
もちろん、下向きに使う場面もある。手元を照らす、物を照らすといった実用面では有効だ。ただ、それはあくまで機能の話。空間としての面白さや広がりは生まれにくい。吹き抜けの高さやスケール感を活かしたいなら、光は上へ向けたい。
「下向きスポット」
吹き抜けでなくても同じことが言える。天井を照らし、その反射光で空間を包む。直接光ではなく、面から返るやわらかな明るさは、住宅に穏やかな奥行きを与えてくれる。
スポットライトの魅力は、その可動性にもある。アームは360度回転し、シェードは約90度振れる。光の方向を自在に変えられる器具なのに、最初から下向きに固定してしまうのは少しもったいない。
取付位置で気を付けたいのは高さだ。FL2000以上は確保したい。低すぎると視野角に入り、眩しさの原因になる。光は当てるだけでなく、見せない工夫も大切だ。
スポットライトは、単に照らすための器具ではない。
空間の視線を、ふわりと上へ導いてくれる小さな仕掛けだ。

施工事例