光を纏った建築 Vol.8 -PH5-
妄想で旅する照明デザイナーodaです。
梅雨の訪れを前に天気の変化のはげしい今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
梅雨の時期は湿度が高く、昼間でも室内はどんよりと暗く感じられがちです。そこで照明を効果的に使い、心地よい空間をつくりたいものです。
そんな空間づくりには、昼間でも夜でも点けていて邪魔にならない間接照明のペンダントライトがお勧めです。
今回の旅は、世界中で愛され北欧デザインのアイコンにもなっているポールへニングセンの「PH5」の世界を巡ります。
PH5は、食卓を低い位置から照らすことを想定してデザインされたペンダントランプで、1958年に発表されました。その名が示す通り、直径50cmの特徴的なシェード。どこから見ても器具内にあるランプは見えず光を必要とされる場所に効率よく導く設計になっています。

不正確極まりない光線を発するフロスト球
それまでのPH5は主としてクリアガラス電球のフィラメント光源から放射される光線を基準にデザインがなされていました。
その一方で、新たな電球の開発も進み電球全体が拡散発光する半透明なフロストガラス製の白熱電球が普及しつつありました。
へニングセンは「不正確極まりない光源を発する」と述べており、フロスト電球は彼の理想とする光源からはかけ離れたものだったようです。
その後のPH5はそのフロスト電球の使用を前提にデザインされているのでへニングセンの光への情熱がさらに強く反映されることとなりました。
対数螺旋と呼ばれる数学的なカーブにより、直接光と間接光の特性と影の重要性を表現するために考え抜かれています。まさに影のデザインにおける傑作と言えるでしょう。

建築的アプローチ
このデザインは、建築で言うところの「フォルムフォローズファンクション(形式が機能に従う)」の原則を体現しています。電球全体を3枚の小さな反射板と4つのメインシェードですっぽりと包み込むことで、すべての光が間接照明の原理で扱われているのが大きな特徴です。電球の真下が円形の蓋で閉じられている点にもデザインの徹底ぶりが伺えます。光源から発する光は、小さな反射板によって拡散反射しながら、4つのっメインシェードで方向づけらて光を放ちます。最上部のシェードは、対数螺旋によるトランペット型の形状をしており、上方に昇ってきた光を水平方向に広げる役割を果たしています。
PH5は空間を定義し、美化し、そして最適化する建築的要素を確立し優れた建築物と言ってよいのではないでしょうか。

断面の写真 断面模型による光の振る舞いの検証(九州産業大学 小泉隆研究室製作)
PH5の世界を一緒に旅していただき、ありがとうございました。
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